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2024/04/24

ネジバナの花で採餌するクマバチ♀は捻れの向きの違いに対応できるか?【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年7月中旬・午前11:00頃・くもり 

山麓の池畔に点々と咲いたネジバナの群落でキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
そもそも私は、ネジバナの送粉者をこれまで実際に観察したことがありませんでした。 

 関連記事(3年前の撮影)▶ クロマルハナバチ♀はネジバナの花で採餌するか?
TV番組を見ていたら(中略)、ネジバナの送粉生態学を分かりやすく紹介していました。 興味深く拝見していると、ニホンミツバチやコハナバチなど体長約1cmの小さなハチがやってくるのだそうです。
クマバチは大型のハナバチなので、今回の観察結果は明らかに反例となります。 

小さな花が並んで咲いている茎を下から上に登りながら螺旋状の花序を順に訪れ、丹念に吸蜜していました。 
登りながらときどき羽ばたいているのは、体のバランスを保つためでしょう。 
ネジバナ花序の天辺に来ると次の花序の下部まで飛んで移動し、また螺旋状に登りながら採餌を続けます。 
後脚の花粉籠は空荷でした。 
ネジバナ螺旋花序での採餌行動を回転集粉と呼ぶのは間違っているでしょうか?(用語の誤用?) 

ネジバナの花でクマバチ♀が採餌する様子を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:50〜) 
花から飛び立った後のホバリング(停空飛翔)もスーパースローにすると見応えがあります。 


ネジバナはラン科なので、それぞれの花には花粉塊があるはずです。
しかし、訪花を繰り返すクマバチ♀の体毛に花粉塊は付着していませんでした。
(花から飛び去る際に、縮めた口吻の先に黄色い花粉が付着していた?)
後脚の花粉籠も空荷だったので、もう花粉が取り尽くされた後の花で吸蜜に専念していたのかもしれません。


細長いネジバナの花序にAFのピントを素早く合わせるのは結構大変なので、クマバチが次から次に別の花序を訪れるシーンを連続で動画に記録することはできませんでした。 
(毎回、蜂が来ている花序にピントを合わせてから撮影を始めます。) 

しばらく観察していると、クマバチ♀がときどき螺旋状のネジバナ花序を下に少し降りては上に登り直すというギクシャクした動きをすることに気づきました。 
ネジバナ花序の螺旋の向きは右回りと左回りが群落内でほぼ半々あるらしく、たまに全く捻じれていない花序もあるそうです。
(私は捻れのない花序を未だ見つけたことがありません。)
それまでずっと右回りの螺旋で採餌していたクマバチ♀が急に左回りの螺旋花序に来ると、戸惑って下降してしまうのでしょうか?(逆もしかり) 
それでもじきに新しい回転の向きに順応して、上に登りながら採餌するようになります。 
クマバチはネジバナの群落内で捻れの反転にいまいち臨機応変に対応できないのかもしれません。 
 …という「もっともらしい仮説」を思いついて有頂天になりかけたのですけど、よくよく考え直すと、説明になっていません。 
たとえネジバナの螺旋花序を下降したところで、蜂にとって螺旋の向きは変わりませんね。 
(左回りの螺旋を下降しても、通い慣れた右回りの螺旋にはならない。) 
素人考えでは、螺旋の向きを統一したほうが送粉者への負担が少ない(授粉効率が上がる)はずです。 
なぜネジバナの花はそのように進化しなかったのでしょうか? 
例えば、右巻きのネジバナと左巻きのネジバナが今まさに別種に種分化する途中だとしたら、面白いですね。 
特定の向きの螺旋花序に対応したスペシャリストの送粉者もそれぞれが共進化で種分化することになりそうです。 
せっかくスムーズに採餌していた送粉者を戸惑わせて負荷(ストレス)をかけたり授粉作業を遅らせたりしているのは、ネジバナの繁殖戦略上、何か秘密がありそうな気がします。 
他家受粉の効率を上げるために、ハナバチには少し採餌したら別な群落に飛び去って欲しいのかもしれません。 

いくら考えても、私にはエレガントでしっくりくる説明が思いつきません。 
それとも単に、一度素通りした花に蜜が残っていることに気づいたクマバチ♀が花序を下降して戻っただけなのでしょうか? 
ネジバナ花序の螺旋の向きが本当にランダム(右巻き:左巻き=1:1)なのか、現場で確かめるべきでしたね。
1本ずつ花序にテープなど目印を付けながら螺旋の向きを調べないと、重複や漏れがありそうです。
下に掲載した写真では、左巻きの花序は少数でした。
個人的にクマバチもネジバナも好きなので、この夏一番エキサイティングな虫撮りになりました。


【参考文献】 
ネット検索してみると、先行研究がありました。
ネジバナ花序の捻れの向きではなく捻れの強弱に注目した研究で、送粉者としてはハキリバチの採餌行動を観察したそうです。 
Iwata T, Nagasaki O, Ishii HS, Ushimaru A. Inflorescence architecture affects pollinator behaviour and mating success in Spiranthes sinensis (Orchidaceae). The New phytologist. 2012;193:196-203. (検索すると、全文PDFが無料でダウンロードできます。) 


この研究の概要が石井博『花と昆虫のしたたかで素敵な関係:受粉にまつわる生態学 』という本に書かれていました。
花序の捻じれ具合が異なるネジバナ群落の中で:しぐま註)捻じれ具合の弱い花序ほど多くの送粉者(ハナバチ)が訪れる一方で、そのような花序ほど、ハナバチ各個体による花序内での連続訪花数が増加していることがわかりました。ハナバチの仲間には、花序を下から上に向かって訪花していく傾向があります。捻じれが強い花序を訪れたハナバチは、いくつかの花をスキップして上の花に到達し、そのまま他の花序へ飛び立ってしまうようです。そして、捻じれが強い花序は、花がばらばらの方向を向いているために、送粉者から、やや目立ちにくくなっているようです。つまり、捻れが弱いほうが多くの送粉者を集めることができますが、捻れが強いほうが隣花受粉は減らせるようなのです。 (p212〜213より引用)

この論文の結果を念頭に置いてネジバナ送粉者の採餌行動を私なりにもっと観察してみたいのですけど、昆虫の数が激減している昨今では、観察効率が悪くて仕方がありません。
ネジバナの花が咲き乱れる群落でしばらく待っても、クマバチ以外の訪花昆虫を全く見かけませんでした。

ネジバナの美しい螺旋花序はとても魅力的なテーマなので、螺旋の形態形成(花の発生学)などをもう少し自分で深く勉強したくなります。 
植物の形態にはフィボナッチ数列フラクタルなど数学的に美しい構造が潜んでいます。 
それを実現するために、具体的にどのようなプログラム(再帰的アルゴリズム)で植物のゲノムに記述されているのか、植物のエボデボ(Evo Devo)やエピジェネティクスも勉強したら面白そうです。 


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【追記】
高校生による独創的な研究を見つけました。
野外でのネジバナの揺れ方の違いから「花の配置が気流に影響する」と考え、「風洞実験装置」いう装置を用いて、煙を使い気流を観察した。
私もこのぐらい柔らかな発想で調べたいものです。
右回り
左回り(私ピンクのサウスポー♪きりきり舞いよ♪きりきり舞いよ♪)
右回り
右回り
ネジバナの花:右回り

2024/04/20

ホンドタヌキの溜め糞場に集まるキンバエを襲って狩るキイロスズメバチ♀

 

2023年7月下旬・午後14:30頃・晴れ 

東北地方南部が梅雨明けを宣言した日、スギ防風林の倒木横に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場phを見に行きました。 
タヌキの新鮮な糞が追加されていた中に黄色い顆粒状の糞が大量に含まれていたのは、未消化のトウモロコシですかね?(真面目に糞分析をしていません。) 
タヌキの溜め糞場phから生えてきた実生は、常緑低木のヤブコウジかもしれません。 
だとすれば、ヤブコウジの赤い実を食べる種子散布者はヒヨドリだけでなく、タヌキになります。 

キイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)のワーカー♀1匹が低空で溜め糞上を飛び回り、獲物を探しています。 
何度も繰り返し通ってきていました。 
キンバエの仲間やニクバエの一種が糞塊に多数群がって吸汁していましたが、キイロスズメバチ♀が低空で飛来すると素早く飛び去ってしまいます。 
たまたま溜め糞phに来ていたザトウムシの一種が目の前のキイロスズメバチ♀を牽制するように立ち向かった(ように見えた)のが意外でした。 
あんなヒョロヒョロの歩脚で勝ち目はあるのでしょうか? 

キイロスズメバチ♀の探餌飛翔を粘って動画に撮り続けると、逃げ遅れたキンバエに襲いかかり、見事仕留めました。 
溜め糞場で獲物を待ち伏せするキイロスズメバチ♀はこれまで何度も見てますが、狩りの成功シーンを観察できたのは初めてで興奮しました。

関連記事(2、10、11年前の撮影)▶  

捕らえたキンバエを抱えてすぐに飛び去ったので、キイロスズメバチ♀が肉団子を作るシーンは撮れませんでした。 
どこか近くに止まり直して獲物を噛みほぐしながらじっくり肉団子を作り、それを自分の巣に持ち帰って幼虫に給餌したはずです。 

狩りの様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。(@0:44〜1:34) 
キンバエの方が圧倒的に敏捷で反射神経も優れているのに、鈍臭い個体が慌てて逃げ損ね、キイロスズメバチ♀の目の前に落ちてしまったのが運の尽きでした。 

その後も溜め糞場phで私がしばらく待っていると、キイロスズメバチ♀が再び飛来しました。 
おそらく狩りの成功体験を得た同一個体が学習して同じ狩場に戻ってきたのでしょう。 
再びキンバエに襲いかかっても、素早く逃げられてしまいます。 
オオヒラタシデムシNecrophila japonica)の成虫・幼虫やワラジムシPorcellio scaber)、オカダンゴムシArmadillidium vulgare)など体が硬い外骨格で守られている虫には決して襲いかかりませんでした。 
溜め糞に着地したキイロスズメバチ♀は、ちょっと身繕いしてから再び飛び立ちます。 
動画素材の順序を編集で入れ替えて、狩りの失敗シーンを成功シーンの前にもってきました。

2024/04/10

トリアシショウマの花で飛び回り採餌するオオマルハナバチ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年7月中旬・午後12:20頃・くもり 

ほぼ廃道状態になった里山の林道に咲いたトリアシショウマの群落でオオマルハナバチBombus hypocrita)のワーカー♀が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
吸蜜する蜂の後脚を見ると、花粉籠に白い花粉団子を満載していました。 
振動集粉するかと期待したものの、静かな山中で耳を澄ませても特有の振動音♪が聞き取れません。 

オオマルハナバチ♀がトリアシショウマの花穂から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:49〜) 
空中でホバリング(停空飛翔)しながら左右の後脚を擦り合わせて身繕いし、体毛に付着した花粉を後脚の花粉籠にまとめます。

2024/04/08

吸蜜後にオレガノの花から飛び立つキオビツチバチ♂【ハイスピード動画】

 

2023年7月中旬・午後12:00頃・晴れ 

民家の庭の花壇に咲いたオレガノ(別名ハナハッカ)の群落でキオビツチバチ♂(Scolia oculata)が訪花していました。 
雄蜂♂との組み合わせは初見です。 



吸蜜シーンを240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
風がやや強く吹く日で、オレガノの花序が激しく揺れています。
スーパースローで見ると風揺れは気になりません。 
オレガノの花から飛び立った後のキオビツチバチ♂を見失ってしまい、高画質のFHD動画は撮れず仕舞いでした。


2024/04/06

ニセアカシア樹上で青虫を狩って肉団子を作るセグロアシナガバチ♀

 

2023年7月中旬・午前10:20頃・くもり 

道端のニセアカシア(別名ハリエンジュ)セグロアシナガバチPolistes jokahamae)のワーカー♀が葉に止まっていました。 
前伸腹節に黄紋が無いので、キアシナガバチではなくセグロアシナガバチと分かります。 

背側から見ても何をしているのか分からなかったのですが、葉の表面の水滴または甘露を舐めているのかと初めは想像しました。 
ニセアカシアに花外蜜腺があるという話は見聞きしたことがありません。 
本家のアカシアには花外蜜腺があるらしいです。 
実際に隣の葉には、アブラムシの甘露が乾いたような痕跡が残っています。 
しかし朝露は付いていませんでした。 

突風が吹いてニセアカシアの葉がめくれても、セグロアシナガバチ♀は振り落とされず葉にしがみついています。 
撮影中は気づかなかったのですが、動画をじっくり見直すと、小さな青虫を大顎で咥えて肉団子にしているところでした。 
蜂の口元がよく見えるよう、画面を2倍に拡大した上で1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
ニセアカシアの葉を食べる蛾の幼虫(種名不詳)を狩った直後だったようです。 
蜂に胸部を噛まれた青虫は必死で暴れています。 
セグロアシナガバチ♀が獲物の肉団子を持って巣に飛び去るシーンはうまく撮れませんでした。

フィールドで少しでも気になることがあったら、駄目元で何でも動画で記録しておくのが大切です。 
(何でもなければ動画ファイルを削除すればよいのです。) 
風が強くて虫撮りには最悪のコンディションでしたが、スローモーションにすれば気にならなくなります。 
むしろ、突風が吹いて蜂が横を向いてくれたおかげで、何をしているのか判明しました。 

私のフィールドでは最近、キアシナガバチに代わってセグロアシナガバチが増えてきたという印象があります。 
以前、私にとってセグロアシナガバチはレアだったのに、もはや珍しくなくなりました。
定量的にきっちり調べた訳ではありませんが、温暖化や都市化が進行した影響なのかと疑っています。 

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2024/04/04

獲物を求めて飛び回り、スギ大木の剥がれかけた樹皮の裏を調べるヒメスズメバチ♀

 

2023年7月中旬・午前11:30頃・くもり 

里山の山腹をトラバースする林道の脇でヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)のワーカー♀が探餌飛翔していました。 
本種はアシナガバチの巣を襲ってその幼虫や蛹を専門に狩るスペシャリストです。 
つまり、狩りモードのヒメスズメバチ♀はアシナガバチの巣を探しているのです。 
スギ老木の根元をホバリングで飛び回り、林床に下草として生えたチヂミザサの葉に着陸すると、枯れたスギ落ち葉の下に潜り込んだりしています。 

私が動画を撮りながら少し近づくと、ヒメスズメバチ♀はスギ幹の根元付近に取り付きました。 
樹皮を齧り取って巣材集めをするのかと思いきや、剥がれかけた樹皮の裏側へ潜り込みました。 
しばらくするとまた外に出てきました。 
このとき獲物の肉団子を咥えてなかったので、樹皮の裏側にアシナガバチの巣はなかったようです。 
そもそも私の経験上、樹皮の裏側の隙間になんかアシナガバチは営巣しそうにありません。

スギ老木への興味関心を失った蜂は、探餌飛翔に戻りました。 
ヒメスズメバチ♀の探餌飛翔を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:05〜) 
スギ林内を低空でジグザグに飛び去りました。

実は、まさにこのスギ大木のめくれかけた樹皮の裏側にカマドウマの大群が潜んでいたことがあります。 
もしもヒメスズメバチ♀がカマドウマを狩りにせっせと通っていたら大発見です。 

関連記事(2年前の撮影)▶ スギの樹皮の裏側に群生するマダラカマドウマ 


今思えば、剥がれかけた樹皮の裏側にヒメスズメバチが営巣していた可能性もありそうです。 
高見澤今朝雄『日本の真社会性ハチ』という図鑑を紐解いてみると、
ヒメスズメバチの営巣場所は、土中の空洞、樹洞、家屋の屋根裏、壁間など(p109より引用)
動画撮影後にスギ樹皮をめくって、しっかり確かめるべきでした。 

関連記事(6、10年前の撮影)▶  



【追記】
探餌行動とは限らず、創設女王が営巣地候補を探索していたのかもしれません。
剥がれかけた樹皮の裏側に樹洞があるのかと期待して潜り込んだとすれば、辻褄が合いそうです。
ヒメスズメバチは獲物となるアシナガバチの生活史と合わせるために、自らの営巣は他のスズメバチ類よりもかなり遅れて始めます。
しかし撮影した7月中旬にヒメスズメバチの創設女王が営巣地を探索しているのは、いくらなんでも遅すぎる気がします。


2024/04/02

扇風行動で巣内を冷やすコガタスズメバチ♀

 



2023年7月中旬・午前11:45頃・晴れ 

物置小屋の軒先に営巣したコガタスズメバチVespa analis insularis)のコロニーを定点観察しています。 
前回と比べて巣の形状ががらっと様変わりしていました。 
外皮が少し大きく成長して、球形というよりも、やや滴状の形になりました。
初ワーカー♀が羽化したので、初期巣に特有の煙突状の細長い巣口は完全に撤去されていました。 
この撤去作業を観察・撮影するのが私のミッシング・リンクになっているのですが、残念ながら今季も見逃してしまいました。 
新たな巣口として、外皮の底部の側面に丸くて大きな穴が開いていました。 

巣口が大きいので中の様子が結構よく見えます。 
中から外をじっと見張っている大型の個体は創設女王です。 
巣内で少なくとももう1匹の内役ワーカーが動き回っていました。 
巣口に顔を出したものの、飛び立って外役に出かけませんでした。 
巣盤の育房の一部は白い繭のキャップで覆われています。 (繭の中で蛹が育っています。) 

巣口の縁から外皮に乗り出した門衛♀が単独で扇風行動をしていました。 
巣内の気温が高くなり過ぎると幼虫や蛹の発生に悪影響を及ぼすので、巣内に冷風を送り込んでいるのです。 
コガタスズメバチの巣口がこんなに大きな例を私は初めて見たかもしれません。
特に暑い日には巣内に熱気がこもらないように、臨機応変に巣口をかじり取って大きく広げるのかもしれません。
後で巣口を狭くするのもスズメバチにとっては朝飯前です。





扇風行動をストロボ写真で記録する際に、羽ばたきが止まって見えるようにもっとシャッタースピードを上げるべきでした。 
ハイスピード動画でも扇風行動を撮りたかったです。 
しかし現場に長居していると、近所の人に怪しまれてしまいます。 
せっかく人通りのない時間帯を狙って来たのに、コガタスズメバチの巣の存在を気づかれたら最後、大騒ぎになり駆除されてしまうでしょう。 
手早く撮影を済ませ、そそくさと現場から立ち去りました。 
とにかく焦っていた私は、肝心の気温を計るのも忘れてしまいました。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→? 
残念ながら、定点観察できたのはこの日が最後でした。 
予想通り、ここでもコガタスズメバチの巣は丸ごと駆除されてしまいました。 
スズメバチにとっても蜂好きにとっても、受難の時代が続きます。 
各種スズメバチの生活史を撮影するプロジェクトが遅々として進まないのは、定点観察の途中で巣が駆除されてしまうからです。 
人目を忍んで細心の注意を払ってコソコソ通わないとスズメバチの観察ができないのは、ストレスでもあり、情けなくなります。 
コガタスズメバチは攻撃性が高くないので、蜂を刺激しなければ、専用の防護服も着用しないで普通に撮影することが可能です。
(黒い服を着るのは避け、黒髪を帽子で覆い、香水や整髪料は使わないなど、服装には注意が必要です)


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2024/03/29

初ワーカー♀が羽化したばかりの初期巣に巣材の団子を持ち帰るコガタスズメバチ♀

2023年6月上旬 

6/7

住宅地の外れで古い物置小屋の軒先にコガタスズメバチVespa analis insularis)の初期巣を見つけました。 
徳利を上下逆さまにした独特の形状です。 
初期巣とは越冬明けの創設女王が単独で作り上げた巣のことで、中でワーカーが卵から幼虫、蛹へと育ちつつあります。 
外敵の侵入を防ぐために、下向きに巣口を細長く伸ばしてあるのがコガタスズメバチの初期巣の特徴です。 
この細長い煙突状の巣口は、初ワーカーが羽化した途端にコガタスズメバチ♀自身が撤去する予定です。 
この日は初期巣を写真に撮っただけです。

巣の成長を微速度撮影(タイムラプス)したくても、定点カメラを設置できそうな場所がありません。 
コガタスズメバチの巣はどうせすぐに駆除されてしまいますから、通りすがりにさり気なく定点観察することにしました。

コガタスズメバチ初期巣の横には前年に営巣したアシナガバチの古巣が残っています。
古巣がぼろぼろになっているのは、風化した上に寄生蛾の幼虫に食害されたからでしょう。
関連記事(1年前の撮影)▶ 

今年もアシナガバチが営巣しているかな?と期待して軒先を覗き込んだら、コガタスズメバチの巣を見つけたのです。

 

2023年6月中旬〜下旬

梅雨の季節で、3回しか定点観察できませんでした。
通りすがりに短い動画を撮るだけなので、創設女王の姿は一度も見れませんでした。
私がじっくり観察していると近所の人に怪しまれ、巣の存在を気づかれたら最後、駆除されてしまうでしょう。

連続写真を見比べると、この時期、コガタスズメバチ初期巣の成長は止まっていました。
外皮の大きさも煙突状の巣口の長さも変わっていないようです。
創設女王が外出中に不慮の死を遂げてしまったのではないか?と気を揉みながらも、推移を見守るしかありません。
初期巣の段階で巣が壊されてしまうと、女王蜂はまた一から巣を作り直す必要がありますから、ワーカー♀が羽化してコロニーの防衛力が上がるまでは必要最低限の初期投資しかしないのでしょう。

ノブドウの蔓が軒先まで少しずつ伸びてきました。
コガタスズメバチの初期巣がノブドウの葉にすっかり覆われてしまえば、巣の発覚が遅れて駆除されるまでの時間が稼げるかもしれません。

6/11

6/20

6/29




2023年7月上旬・午前10:50頃・くもり

しばらく間隔が開いてしまいましたが、久しぶりに様子を見に来てみると、煙突状の細長い巣口が部分的に取り壊されていました。(@0:39〜)
細長い巣口先端部の縁がギザギザに欠けていて、一部を撤去した形跡があります。
更に、丸い外皮の下部が食い破られて、新たに大きな巣口が作られていました。
待ちわびた1匹目のワーカー♀が無事に羽化したようです。
ちなみに、かじり取った外皮は捨てるのではなく、内部の巣盤や育房の材料(巣材)として再利用されるかもしれません。

動画撮影中に運良くコガタスズメバチ♀が飛来しました。
ワーカー♀か創設女王か、私には外見で区別できません。
新しく開けた大きな巣口ではなく、従来通り律儀に煙突状の巣口の狭い先端から潜り込んだのが興味深く思いました。
これまでの帰巣ルーチンの癖が残っているということは、この個体は創設女王だろうと思います。

帰巣シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう(@1:00〜)。 
よく見ると、口元に何か黒っぽい団子を運んでいました。
色から判断すると、巣に搬入したのは獲物の肉団子ではなく、どうやら巣材のパルプのようです。
巣盤に掴まって(ぶら下がって)何かしているものの(咀嚼作業?)、残念ながら姿がよく見えません。
獲物の肉団子だとしたら、育房内の幼虫に給餌するはずです。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


数時間後に現場を再訪したのですが、近隣住民が草刈りしていたので撮影できませんでした。
通りすがりに横目でちらっと見ると、煙突状の巣口の状態は往路で見たときと変わりませんでした。
コガタスズメバチの初期巣に特有の細長い巣口を撤去する作業は、ごく短時間に行われると予想していたので、意外でした。




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7/3

2024/03/27

ナンテンの花で採餌するヒメハナバチの一種♀

 

2023年7月上旬・午前11:05頃・くもり 

街なかで民家の軒下に植栽されたナンテンにヒメハナバチ科の一種♀(種名不詳)が訪花していました。 
通常マクロモードでカメラのレンズをそっと近づけても、訪花中の蜂は逃げませんでした。 
口吻を伸ばして吸蜜する蜂をよく見ると、後脚の花粉籠に黄色い花粉団子を満載しています。 
採餌の合間に身繕いして、体毛に付着した花粉をまとめて花粉籠に移します。 

トラマルハナバチ♀も同時に訪花していましたが、互いに無関心でした。 

2024/03/25

地下に巣穴を掘った土を分業で外に捨てるクロオオアリ♀の群れ

 

2023年7月上旬・午後14:55頃・くもり 

里山で山道の真ん中に乾いた盛り土がこんもりと堆積していました。 
細い落枝が盛り土で埋もれかけています。 
よく見ると、盛り土の縁にクロオオアリCamponotus japonicus)の巣口が2つ並んでいるのを見つけました。 
ワーカー♀が巣内を掘り広げた土塊を大顎に咥えて外に続々と出て来ると、巣口から離れたところでポトリと捨てます。
1箇所に捨てた土砂が盛り土を形成しているのです。 
地中から掘り出したばかりの土塊は湿っていて黒っぽいですが、巣外で乾くと白っぽくなります。 
したがって、盛り土の色の違いをよく見るだけでも、排土作業の様子を窺い知ることが出来ます。

普通種なのに、クロオオアリの造巣行動(排土行動)をじっくり観察するのはこれが初めてでした。 
巣口横の盛り土が次第に成長する様子を長時間の微速度撮影で記録してみたかったのですが、残念ながらこの日は三脚を持参していませんでした。 
「小さなことからコツコツと」「塵も積もれば山となる」 

土粒を捨てに行く地点は個体によって決まっているのか(道標フェロモンを分泌しているか?)、それとも毎回ランダムなのか、個体標識して調べたら面白そうです。 
遠出しないで巣口のすぐ外に砂粒を捨てる個体は臆病なのか、それとも要領が良い(ちゃっかりズルしている)のでしょうか? 
しばらくすると驚いたことに、巣内から巣口Lまで土塊を運ぶ個体(地下部隊)と、巣外で巣口Lから土捨て場まで運んで往復する個体(地上部隊)とで、分業が始まりました。 
女王アリや現場監督に指示された訳でもないのに、分業が自然に生まれるのは凄いですね。 
分業によって各個体が往復する距離を短くできますから、流れ作業の効率が上がるはずです。 
火事の消火現場に集まったヒトがバケツリレーをするのも同じ理由です。
帰巣Lするのに邪魔な砂粒を取り除く行動が結果的に分業になっているだけかもしれません。 
クロヤマアリなど他の種類のアリでこのような分業を私はこれまで見たことがありません。

巣穴は内部でつながっていると思われますが、クロオオアリ♀は2つの巣口を使い分けているようです。 
排土のために出てくるのはいつも左の巣穴Lで、右の巣穴Rには採餌のために出入りしています。 
土塊を外に捨ててから巣内に戻る個体は必ず真っ直ぐ帰巣Lし、巣口Rには入りません。 
( 巣口Rから出て巣口Lに入る個体がたまにいました。 )
空荷で出巣Rする個体は採餌に出かけるのでしょう。 

ひときわ大型の個体が何匹も巣口Rの外に出てきて身繕いしています。 
大型の個体は力が強いはずなのに、造巣・排土行動に従事しない点が興味深く思いました。 
巣外で仲間を護衛するソルジャー(兵アリ)なのかな? 

巣口Lからアリの触角だけ覗いて見えます。 
外敵が侵入しないように、門衛が見張りを務めているのでしょう。 
門衛は穴掘り・排土作業に従事することはなく、専業のようです。 

山道に転がっている細い落枝が盛り土で埋もれかけているのは果たして偶然でしょうか? 
クロオオアリにとってこの落枝が邪魔で取り除きたくても非力で動かせないとしたら、仕方なく土砂で埋めようとしているのかもしれません。 
邪魔な障害物を土砂で隠すアリの集団行動をテレビの動物番組で見たことがアリます。 

後半は採寸のために、土捨て場の小山の横に15cmの白いプラスチック定規を置いてみました。 
定規という邪魔な異物を巣口の横に一時的に置くだけでなく、もしも長期間放置したら、アリは土砂で埋めるかな? 


 

↑【おまけの動画】 
クロオオアリの巣穴を見つけた私が、動画を撮り始めてすぐの様子です。 
巣口の近くから見下ろしている私を警戒しているのか、クロオオアリ♀は土塊を咥えて遠くまで捨てに行かなくなりました。 
巣口からおそるおそる顔を出しても、すぐに奥へ引っ込んでしまいます。 
アリの視力が悪くても、私の作る大きな影を恐れているようです。 
あるいは、じっと撮影しているつもりでも私の靴底から生じる微弱な振動が地中のアリには気になるのかも知れません。
一方、空荷で外出から帰巣する個体は私の存在を気にしていません。 

そこで試しに、巣口のアリから私の姿が見えないように、数歩横にずれてから続きを撮るようにしました。 
するとアリはようやく警戒を解いてくれて、巣外に土砂を捨て始めたのです。 
冒頭で紹介した動画がそれです。
私が巣口から遠くに離れるほど、アリたちはリラックスして自然な行動を見せてくれるようになった気がします。
退屈な前編を編集でただ捨てる(カットする)のは惜しいので、私的な記録としてブログ限定で公開しておきます。 
あるいは何か別の理由で巣外に出てこれなかったのかも知れません。 

余談ですが、近くでひたすら鳴き続けているホトトギス♂(Cuculus poliocephalus)の囀りさえずり♪が今まで聞いたことのない独特の節回し(方言? 変奏曲?)で印象に残りました。 


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2024/03/24

山道で死んでいたオオスズメバチ♀の謎

2023年7月上旬 

里山の急峻な山道でオオスズメバチ♀(Vespa mandarinia japonica)の死骸を見つけました。 
複眼が白く変色しています。 
足先以外は目立った外傷や破損がありませんし、おそらく昆虫病原菌や虫カビに感染して斃死したのでしょう。 
いつ死んだのか、死亡時期が私には分かりません。 
昨シーズンのワーカー♀が死んで雪の下に埋もれていたとしたら、夏までに死骸がここまできれいに残らず分解されてしまう気がします。 
例えば、なぜアリが群がってオオスズメバチ♀の死骸を解体し巣に持ち去らなかったのか不思議です。
それとも越冬明けの創設女王が感染してしまったのでしょうか。 
心臓破りの急坂を登る途中だったため、体長を採寸するなどじっくり調べる余力がありませんでした。 

素人目には、これから冬虫夏草の一種ハチタケが育ちそうな予感がしたのですけど、定点観察に通えばよかったですね。 
しかし山道の真ん中に転がっていたので、たまに往来する登山客やタヌキなどの野生動物に踏まれてしまいそうです。 
かと言って、もしオオスズメバチの死骸を採集して持ち帰ったとしても、室内でハチタケが成長できる最適の培養条件(温度、湿度)が分かりません。

ウツボグサの花から花へ飛び回り採餌するトラマルハナバチ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年7月上旬・午前11:45頃・くもり 

里山の麓に近い山道に沿って咲いたウツボグサの群落でトラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が忙しなく訪花していました。 
シソ科の唇形花に正当訪花で吸蜜する蜂の後脚を見ると、花粉籠に茶色の花粉団子を付けています。 

トラマルハナバチ♀の採餌行動を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:30〜) 
トラマルハナバチは顔の幅が細いので、花筒の奥に顔を突っ込みやすくなっています。 
花筒から長い口吻を引き抜きながら、左右の中脚で同時に胸背と頭部を拭い、付着した花粉をまとめています。 
次の花に飛びながら空中でも身繕いを行い、後脚の花粉籠に移しています。 
飛翔中も長い口吻を伸ばしたままでした。 (邪魔にならないよう後方に向けている。)
一連の動きに無駄がありません。

関連記事(11年前の撮影:吸蜜のみ)▶ トラマルハナバチ♀がウツボグサに訪花 


トラマルハナバチの他にはセセリチョウの仲間(イチモンジセセリ?)も訪花していたのですが、蜂の撮影を優先している間に見失ってしまいました。

2024/03/21

手まり咲きの白いアジサイの花で振動集粉♪するクロマルハナバチ♀

 

2023年7月上旬・午後16:55頃・くもり 

郊外の住宅地で民家の庭に植栽された白い手まり咲きのアジサイ(紫陽花)クロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。
ガクアジサイから変化し、花序が球形ですべて装飾花となったアジサイは、「手まり咲き」と呼ばれる。(wikipedia:アジサイより引用)

クロマルハナバチ♀がアジサイの白い装飾花の奥に潜り込んでしまい、採餌シーンがしっかり観察できません。 
断続的にプーン♪という羽音が聞こえるということは、振動集粉をしているようです。 
実際には羽ばたかずに、胸部の飛翔筋を高速で激しく収縮させています。 
全身を細かく震わせて雄しべの葯から花粉を揺すって落とし、自らの体毛に付着した花粉を効率よく集める採餌法です。 
後脚の花粉籠には白い花粉団子を集めています。 
最後に蜂が飛び去る羽音はブーン♪という重低音で、振動集粉よりも周波数が低く聞こえます。 
つまり、飛翔時の羽ばたきよりも高速で飛翔筋を伸縮させて振動集粉していることが分かります。

※ 振動集粉の音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


関連記事(7、11年前の撮影)▶  
エゾアジサイの花で採餌するトラマルハナバチ♀ 


クロマルハナバチ♀の振動集粉を声紋解析してみる

いつものように、オリジナルの動画ファイルから音声パートをWAVファイルとして抽出してから、振動集粉および羽ばたく羽音を切り出し、それぞれスペクトログラムを描いてみました。 
遠くでニイニイゼミ♂(Platypleura kaempferi)が絶え間なく鳴いていますし、私が手に持ったカメラからギシギシときしむ音を立ててしまったので、ピンクノイズが多いです。 
音程の違いだけでも可視化したかったのですが、説得力のあるきれいなスペクトログラムを得られませんでした。

振動集粉のスペクトログラム(2回分)

 
羽音のスペクトログラム


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2024/03/18

ナンテンの花で採餌するトラマルハナバチ♀

 

2023年7月上旬・午前11:05頃・くもり 

街なかで民家の軒下に植栽されたナンテンの灌木にトラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が訪花していました。 
この組合せは初見です。 
吸蜜・集粉する蜂の後脚を見ると、花粉籠に橙色の花粉を満載していました。 

焦った私がレンズを近づけ過ぎてしまい、トラマルハナバチ♀を警戒させてしまったかも知れません。 
レンズを掠めるように飛び去る際にブーン♪という低い羽音が聞こえました。 
短い出会いを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:11〜)


ヒメハナバチの一種♀も同時に訪花していましたが、互いに無関心でした。 

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